小沢大介氏(beatleg magazine)によるライナーノーツ

 ひらくドア初の全国展開アルバムはグループがそれまで生みだしてきた音楽の総決算といえるだろう。ここに収録された楽曲のほとんどが彼らのライブ・レパートリーとして演奏されてきたものでもある。このアルバムに収められたように、彼らの楽曲はどれもハードさとポップさが同居する独特のサウンドが大きな魅力なのはもちろんだが、それらがステージでは非常にダイナミックに演奏されるのだ。そのダイナミックな勢いはこのアルバムの中にも見事に凝縮されている。そしてこれらの楽曲のいくつかは既に自主制作CD-Rで一足先に日の目をみていた曲や録音もあるが、それらは今回の収録に当たってどのような変化を遂げているのだろうか。

1. 夏子の生活

 昨年の5月からバンドで演奏されるようになったこの曲は、非常に風通しの良い雰囲気とリフが愛らしい曲で、ドラムにE.MURAYAMAが加入した現在のひらくドアを代表する曲といえる。それだけに、彼女の歯切れのいいリズムが映えるこの曲がアルバムのオープニングを飾ったのは当然のことだろう。しかもこの録音はインディー・バンドのコンピレーション『wild gun crazy compilation vol.4』で今回のアルバムに先駆けること約半年前に日の目を見ていたが、今回晴れてグループのアルバムに収録されている。

2. Love Love Love Love

 この曲もまたグループを代表する名曲と言えよう。非常に快活で親しみのあるメロディと演奏だが、音源自体は既にこの曲の名前を冠した自主制作ファースト・アルバムの最後に収録されていたものと同じもの。しかし新たなマスタリングによって今回収録されたバージョンの方が非常に洗練された仕上がりになっているのがさすがだろう。演奏の迫力は今回の方が明らかに上で、この曲でドラムを担当したピラミッドの山口氏のプレイやWカトーのギターからあふれ出る迫力もこちらの方が上だ。
 また二番でそのクールなルックスからは想像できないような清らかなボーカルを聴かせてくれるのはギタリストのヒロヒサカトーによるものだ。それでいて演奏が途中で豹変し、また元に戻る展開はひらくドアのバンドサウンドの真骨頂といえよう。

3. 君の銀色のギター

 この曲はひらくドアの楽曲の中では比較的最近のものであり、2008年の初冬から演奏され始め、昨年の春にはグループ初のシングルとしてリリースされた曲だ。私は幸運にもこの曲の最初期の演奏(ライブ二回目)の演奏に立ち会うことが出来たが、即座にこの曲に魅せられたことは忘れられない。哀愁のあるメロディと反対に歯切れのいい演奏という対比が実に見事だし、中間では当時サポート・キーボードだったみんちょがリード・ボーカルを取るパートがあるのもメリハリがあって効果的だった。それだけに、この曲がシングルとしてリリースされたのも当然だと思ったものだ。
 そして今度は晴れてアルバムへの収録も実現した。この曲はプロモーション・ビデオも制作されていて、グループのホームページやYouTubeで見られる。しかしこの映像、実は2バージョン存在する。

4. 夏ってなんかいい

 ライブではおなじみのナンバーであると同時に、今回のアルバムに収録されたナンバーの中ではもっとも以前から音源が出回っていた曲でもある。何故ならこの曲はタカユキカトー名義のアルバム『ガールフレンド・イン・エステシティ』で彼を中心として録音されたバージョンが2006年にリリースされていたからだ。しかし、今回の収録に当たってはひらくドア現メンバーで新たに録音されたバージョンとなっている。基本的なアレンジなどは2006年バージョンと同じだが、そのダイナミックな演奏の迫力はさすがに現バンド・メンバーならではのもの。非常にダイナミックな演奏で、左右を飛び交うタカヒロ・ミズネイラのタンバリンがいい隠し味になっている。実際にミズネイラはライブにおいてステージを飛び交っている訳で、それを音で現す形にもなっている。

5. 思いで迷子

 この曲は本アルバムにおいて異色の存在といえる。そもそもこの曲はタカユキカトーが一人で録音して完成させたそのアコースティックな曲調ゆえに、ひらくドアのステージで演奏される頻度が少ないのだ。私はたまたま2008年8月の下北沢モナ・レコードでその場所の性質上、アコースティックな構成のステージだった時にこの曲が演奏されたのを目撃しているが、その時でも普段演奏されない軽やかな曲として印象に残ったことを覚えている。その他E.MURAYAMA加入後初のライブだった12月のモナでも演奏された記録が残っており、ひらくドアのレア・レパートリーといえよう。
 しかし楽曲自体はタカユキカトーのメロディ・センスが冴える見事なアコースティック・チューンで、軽やかに始まるのにエンディングが哀愁たっぷりに終わるのが最高だ。しかも今回のアルバム・リリース直前辺りから、この曲をエレクトリックなバンド・アレンジに変えたバージョンがひらくドアのステージでも演奏され始めており、それが実にいい味を出している。今回のアルバムでこの曲に惹かれた人は、その新たなライブ・バージョンにも惹かれること請け合いだ。

6. 雨のプール

 これもライブではおなじみの最高に快活な一曲で、今回と同じ録音が『ガール・フレンド〜』とコンピレーション・アルバム『アナログの風』で一足先にリリースされていた曲だ。しかし今回のリリースに当たっては、新たに録音し直されたバージョンが収録されている。よってタカユキカトーが当時の2008年当時のサポート・メンバーと共に録音していた以前のバージョンとは演奏の印象がガラリと変わっている。元々、非常にきらびやかな演奏が忘れられない曲だったが、それと同時に演奏のソリッドさが伝わってくる仕上がりへと生まれ変わっているのだ。そしてこの録音もトラック自体はたかゆきカトー一人によるもので、イントロのフレーズがピッチシフターを用いた独特の雰囲気で鳴らされている。それに対しライブではイントロのフレーズがWカトーによるツイン・リードにアレンジされており、その見事なギター・ワークもライブで確認してみてほしい。
 そして新たなボーカルは前のバージョンのようななめらかさの代わりに力強い調子で歌われており、迫力を増した演奏にはこの調子がぴったりだろう。もっとも、この曲ならではの軽やかな歌の雰囲気は変わらないのだが、それでも前のバージョンよりも豊かな表現力がはっきり伝わってくる。イントロが終わったところの「イエーイ」はみんなでやりたいものだ。

7. 窓の外

 この曲も「君の銀色のギター」と同じ時期にステージ・レパートリーとして加えられたものだが、スペイシーで浮遊感のある曲調はひらくドアの中では異色なものだったが、今や彼らのライブに欠かせない曲となっている。何とここではみんちょの弾くキーボードとヒロヒサカトーのボトルネック・ギターのフレーズのコンビネーションが絶妙だ。
 しかしこの曲のハイライトといえば、何と言っても寺中イエスのベース・ラインのぶっ飛び具合で、コーラスのバックにおけるフレーズなどは実にファンキーなものだ。それが間奏になるとさらにエスカレートし、凄まじいフレーズを連発している。これがステージになるとさらにぶっ飛んでいるので、彼らのライブでぜひそれを確認してみてほしい。
 そしてこの曲も昨年の夏に、彼らが頻繁にライブを行っている高円寺のクラブ・ライナーで配布されていたCD-Rに含まれて一足先に日の目を見ていたが、これまた晴れてグループのアルバムへの収録を果たしている。

8. 雨の日の帰り道

 しかし、アルバムの最後を締めくくるこの曲はもっと異色、というか普段のひらくドアとはまったく違うサウンドや曲調に驚かされるだろう。ロックバンドの雰囲気から一変し、最後は合唱するかのような曲で幕を閉じているのだ。しかしこの曲は衝撃的であると同時に非常に魅力的で、こういう楽曲も作れてしまうところがタカユキカトーの凄いところだと思う。
 一分にも満たない小品で歌も一番分しかないという変わった構成だが、実はこの曲のバンド・アレンジを想定したバージョンも存在しており、そちらには二番というより続きの展開部の歌詞も設けられていた。いずれにせよ、異色ながら病み付きになるような曲だろう。それだけにこれまで一度もライブで披露されたことがなかったが、今回のアルバムへの収録を機にひらくドアのバンド・アレンジに仕立てられたバージョンがステージで披露され始めている。これは非常に期待できる演奏だったので、これからが楽しみである。

 当然ながら、アルバムに収録されなかった曲が多数あるのはもちろん、ライブで披露されていない曲もたくさんある。よって、このアルバムはひらくドアの過去と未来、そして現在をコンパクトにまとめあげたアルバムといえるだろう。ライブで彼らの音楽を聴きなれた人、このアルバムで彼らの音楽に触れた人の両方にとって新鮮に響くことだろう。

小沢大介(beatleg magazine)

◆アルバムについて

▼He Luck Door

ついにひらくドアのCDが全国発売!

wild gun crazyコンピ収録の『夏子との生活』、シングル『君の銀色のギター』などのアルバム未収録曲と、ライブでおなじみ『夏ってなんかいい』の待望の現メンバー録音バージョンなどなどの新しい音源を加えた「ベスト+α」的な内容のニューアルバム『He Luck Door』が、ULTRA-VYBEより全国発売。
発売時点(1月)での2010年ベストアルバム間違いなし!!

■収録曲

  • 夏子との生活
  • LoveLoveLoveLove
  • 君の銀色のギター
  • 夏ってなんかいい (新バージョン)
  • 思いで迷子
  • 雨のプール (ボーカルとりなおしてリマスター)
  • 窓の外
  • 雨の日の帰り道

●2009年1月13日発売予定 / 1000円
●全国の特に大型レコード店で販売予定
発売元:ULTRA-VYBE

とくてん!ロゴ

特典CD-R「とくてん!」
・ディスクユニオン全店
(ネット通販含む)
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1. 井筒レコードのテーマ
 (とくてん!バージョン)
2. I Think About You!
3. I Wanna Say  (デモ)
4. (タイトルバック)
5. 夏は君も (デモ)
6. My Love Is Not Forever



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